〝デザイナーの仕事は デザインを通して そこにある問題を解決すること〝
ビルの壁面からこぼれ落ちるように咲き誇る花々と生命力あふれるグリーン。私たちに驚きをもたらした「パソナ アーバンファーム」をはじめ、新しいコンセプトを打ち出す斬新なデザインで知られる建築・インテリア&プロダクトデザイナー、河野能美氏。ニューヨークを拠点にアメリカ、日本、英国などグローバルに活躍し、プロダクトやCI、グラフィックデザインまで手がける河野氏に、これからの空間デザインや素材についてうかがいました。
みんなが笑顔で眺めるランドマークそんな存在になったことを実感しました
農業のビルだということを、外部の人にもわかるようにしたいという発想で、南面と東面をグリーンで覆い、交差点に来た人みんなが眺める外観にしました。可能な限りバルコニーの面積を増やしてより自然を感じてもらえるように設計し、季節ごとに300種類程のプラントを植え、藤の花が登っていくようにビジュアルも遊んでいます。この外観のインパクトのせいか、地域のコミュニティスポットになり、観光バスも停まり、世界のVIPが訪れる空間になっているそうです。帰国したとき、このビルをみなさんが笑顔で眺めている姿を見て、自然のコーナーが都会にできたことがすごく良かったと感じました。
風合いがあり、自然で深みのあるテクスチャー ショールームを訪れてデクトンを採用しました
カラーは「Sabbia サビア」を選んだのですが、ニュートラルな色がいいですね。大判のスラブで見たとき、とても自然ですし、木などの素材ともすーっとなじむ感じ。「Pietra Kode ピエトラコード」の中でも、ひかえめでやさしい色合いがきれいだと思いました。自然でやさしい色合いは、日本の建物にとても合う。狭い空間でも、できる限り大きなサイズのものを大胆に使うことで、一体感があって広々と感じるスペース作りに役立つと思います。
社会的に取り残されている人達のためにデザイナーとして関わっていきたい
現在、アメリカでスタートしたばかりのプロジェクトが、障害を持つ退役軍人のための施設です。農業に従事し、土に触れて作物を育てることがPTSDの問題を解決するのに寄与するという研究結果に基づき、アパートの中にインドアファームを作り、農業に携わることでトラウマを克服するという試みです。初めは、日本の「パソナ アーバンファーム」を見て、退役軍人の方が自ら私に電話をかけてきたので驚きました。現在、退役軍人を中心に非営利の財団や市と話し合いを進め、ロードアイランド市が廃校になった小学校を提供してもいいという話が出ています。建物を作ることによって、近隣の人がフレッシュな野菜を買いに来る。コミュニティでのふれあいが生まれ、平等性を実現するためのミュニケーションがとれる。社会的に取り残されている人たちのためになる仕事。それも、広い意味でサステナブルにつながると思います。
Yoshimi Kono
建築・インテリアデザイナー・プロダクトデザイナー