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木材・突板のプロフェッショナルが語った インテリアのデザイントレンド

安多茂一氏のトークイベント「素材を選ぶ」Cosentino City Tokyoで開催!

Cosenthino City Tokyoが建築家やインテリア関連のプロフェッショナルを招いて開催するトークイベントの第2弾として、2022年11月18日、安多化粧合板株式会社 代表取締役社長である安多茂一氏の講演が開催されました。テーマは「素材を選ぶ」。国内外で採れたさまざまな木材をスライスし、独特のデザインとテクニックによって個性ある突板化粧合板を作り出す安多化粧合板。代表の安多氏は、突板のスペシャリストであると同時に、常に世界最先端のデザイントレンドに触れ、その思想を自らの仕事にも取り入れて進化し続けている独創的な建築人。そのトークショーは発表と同時に反響があり、今回はご入場いただけない方もいらっしゃいました。

突板でしか創れない風景を描くウッド・ビスポーク

古くからモノづくりの土地として知られる東大阪に近い八尾市にある安多化粧合板は、社員6人という少数精鋭の工房。スタッフのほとんどは元々職人ではなく、インテリアデザイナーやグラフィックデザイナー、音楽関係など、デザインやアートに携わってきた人材です。「アーティザンという言葉がありますが、デザインの勉強をしながらモノづくりをしていこうと考えています」と語る安多さん。「私たちの仕事はオーダーメイドではなく、ビスポーク。お客様の言うままの突板を作るのではなく、一緒に話をしてワンランク上のものを創ることにこだわっています」。

突板の製作にはさまざまな工程がありますが、現在では北海道、東北、ヨーロッパなど、木を切るところから始めているものもあるほど。「自分たちで切った木を自分たちのセンスでスライスし、自分たちで内装や家具をデザインし、自分たちの手で加工する。価値観のトレーサビリティというのかな。そういった部分を大切にしています」。自然の中にある木と対峙して突板をつくり、デザインして製品にする。真に贅沢なモノづくりがここにあります。

 

「一般的に無垢材を使いたいけれど、高いから突板にする。あるいは、無垢材は年月とともに反ってしまうので、突板を使うことにした。確かにそうおっしゃる方もいます」。突板は無垢材の代替品と思われていることがわかります。「でも、僕はそうは思いません。突板の木が風景を描いて、無垢材以上に記憶に残る家具になることもあります」。たとえば、安多化粧合板が手がけた銀座WAKO1階の時計売場のディスプレイ。ひときわ目を惹くサイド部分の突板は、デザイナーの筆書きを具象化したもの。280メートル続く木目は、突板ならではの表情となっています。

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ストーリーとともに木を提案する

「素材を選ぶ」というテーマに関しては、ストーリーをセットで提案するのもいいと安多さん。「ウォールナットは人気のある建材ですが、『胡桃の木にしましょう』という話をするんです。胡桃の木のキャビネットというほうが愛着が湧くでしょう」。

安多化粧合板は、銀座マロニエゲートにも突板を納めています。「マロニエは癖があるので突板になりにくい木材なのですが、使えれば美しい意匠になります。マロニエの実は馬の大好物で、馬車が交通手段だった時代、パリに人を呼びたいと考えて都市政策のためにシャンゼリゼ通りに植えられたそうです」。そういったストーリーと一緒に提案することは、お客様の想像力をかき立てることにもつながります。

「ブライダルの仕事が来たときは、ウォールナットの下をくぐって広い空間に出るデザインにしました。ウォールナットの木の下でプロポーズすると幸せになれるという言い伝えが、いまも信じられているからです」。

木のストーリーとともに提案することで、デザインのヒントにもなり、お客様の愛着にもつながるという、とても興味深いお話でした。

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自然の摂理を映すサステナブルなデザイントレンド

毎年会社を休みにして、スタッフ全員でミラノサローネに視察に赴く安多化粧合板。デザインウィークでは、時代の変革を感じさせる事件に遭遇してきたといいます。2015年にはオランダのインテリアデザイナーが「毎年新しいデザインを発表すると環境破壊につながる」と宣言。2018年のダッチデザインウィークでは“good design for a bad world”をスローガンに温暖化・環境破壊に対する危機感が叫ばれ、同じ頃にコム・デ・ギャルソン青山店には解体されたトルソーが並び、川久保怜が「無駄な新しいものを創ることへのアンチテーゼ」を訴えました。現在、各国のデザインウィークで注目を集める発表には共通点があり、「コーヒーの搾りカスで作ったシューズやウェア、ヘンプを使った建築資材、マッシュルームの菌が創り上げる模様。いずれも、土に還る素材、しかも地域にあるものを使おうというメッセージが込められています」。

そんな安多さんが忘れられないと語ったのが、2018年にベンジャミン・ヒューバートがコセンティーノ®のデクトン®を使って行ったインスタレーション。「空間に水を入れたガラスのオブジェがあり、人が通るたびに空気が揺れてデクトン®に光の模様が映し出される美しいアート。人が空間に入って自然の力のすばらしさに気づく。そういった新鮮な驚きをインテリアや家具で気づかせることも、インテリアデザイナーの力だと思います」。自然と共生するムーブメントに触れて終了したトークショーは、ゲストの皆様も深い感銘を受け、余韻が続きました。

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安多 茂一氏

安多化粧合板株式会社 代表取締役社長

国内外の建築家、インテリアデザイナーから高い評価を受ける木材・突板のスペシャリスト。社会情勢を絡めた独特の視点によるデザイン分析、ロジカルなトレンドフォーカスには定評がある。